歌奏テクニック集

オーディオインターフェースとDAWを使った録音レベルの設定方法

Tags: 録音, オーディオインターフェース, DAW, レベル設定, 宅録

はじめに

歌や演奏を自宅で録音する際、機材の準備や接続、DAW(Digital Audio Workstation)の操作方法など、様々なステップがあります。その中でも、録音される「音量」、つまり録音レベルを適切に設定することは、後々の編集作業や音質に大きく影響する非常に重要な工程です。

録音レベルが大きすぎると音が歪んでしまい、小さすぎるとノイズが目立ちやすくなります。これから歌や演奏の録音を始める方に向けて、オーディオインターフェースとDAWを使用して、適切な録音レベルを設定するための基本的な考え方と手順について解説します。

録音レベルとは何か

録音レベルとは、マイクや楽器から入力されたアナログ信号が、オーディオインターフェースを通してデジタル信号に変換される際の音量の大きさを示すものです。主にdB(デシベル)という単位で表され、DAWのミキサー画面などに表示されるメーターで確認できます。

適切な録音レベルを設定する目的は、以下の2点にあります。

  1. 音割れ(クリッピング)を防ぐ: 音量が大きすぎると、デジタルで記録できる上限を超えてしまい、音が歪んで「音割れ」が発生します。一度音割れしてしまった音源は、後から修正することが非常に困難です。
  2. ノイズフロアを目立たなくする: 音量が小さすぎると、録音される信号に対して、機材や環境から発生する微弱なノイズ(ノイズフロア)の割合が大きくなり、再生した際にノイズが目立ちやすくなります。

理想的な録音レベルは、音割れする一歩手前で、かつノイズフロアから十分に離れた音量です。具体的な数値としては、DAWのメーターでピーク時(一番大きな音が鳴った瞬間)に-6dBから-12dB程度に収まるように調整するのが一般的です。これはあくまで目安であり、使用する機材や録音内容によって多少前後することもあります。

オーディオインターフェースでのレベル設定(ゲイン調整)

歌や楽器の音は、まずオーディオインターフェースに入力されます。ここで録音レベルの大部分を調整するのが、オーディオインターフェースに搭載されている「ゲイン」コントロールです。

ゲインとは、入力された信号の音量を増幅する機能のことです。マイクレベルのような非常に小さい信号を、ラインレベルと呼ばれる適切な信号レベルまで引き上げたり、楽器からの信号レベルを調整したりするために使用します。

オーディオインターフェースの各入力チャンネルには、ゲインを調整するためのノブ(つまみ)がついています。録音する際は、まずこのゲインノブを使って、入力される信号の大きさを調整します。

多くのオーディオインターフェースには、入力信号のレベルを示すインジケーター(ランプやメーター)が搭載されています。信号が適切なレベルで入力されているか、音割れしていないかを確認しながら、このゲインノブを操作します。信号が大きすぎて音割れしそうな場合は、通常、赤色のランプが点灯するなどの警告が表示されます。

DAWでのレベル確認と設定

オーディオインターフェースで適切にレベル調整された信号は、DAWに取り込まれます。DAW上でも、各トラックのミキサー部分にレベルメーターが表示され、録音中の音量を確認できます。

基本的な考え方として、オーディオインターフェースでしっかりとゲイン調整を行い、DAWには適切なレベルの信号を入力するのが理想です。そのため、DAW側の入力レベルを調整する項目(もしあれば)は、通常は最大の0dBに設定しておくことが多いです。DAWで入力レベルを下げてしまうと、オーディオインターフェースから送られてきた適切な信号を意図的に小さくすることになり、デジタル的な解像度を十分に活かせない可能性があるためです。

ただし、DAWによっては入力レベルを微調整できる機能があったり、ソフトウェアミキサー上でさらに細かく設定できる場合もあります。基本的な録音レベルはオーディオインターフェースで設定し、DAWではそのレベルを確認、必要に応じて微調整するという流れを理解しておくと良いでしょう。

録音レベルの具体的な設定手順

ここでは、歌やアコースティックギターなどをマイクで録音する際の、オーディオインターフェースとDAWを使った具体的なレベル設定手順を説明します。楽器をライン入力する場合も、基本的な考え方は同じです。

  1. 機材の接続確認: マイク、オーディオインターフェース、パソコン、ヘッドホンまたはスピーカーが正しく接続されているか確認します。オーディオインターフェースがパソコンに認識されているかも確認してください。
  2. DAWの準備: 使用するDAWを起動し、新しくオーディオトラックを作成します。作成したトラックの入力設定で、使用するオーディオインターフェースの入力チャンネルを選択します。
  3. ゲインノブを最小に: オーディオインターフェースの、使用する入力チャンネルのゲインノブを一旦最小(左に回しきった状態)にします。これは、いきなり大きな音が入ってきて機材や耳を痛めたり、最初から音割れしたりするのを防ぐためです。
  4. モニタリングの設定: DAWまたはオーディオインターフェースの機能を使って、入力されている音がヘッドホンやスピーカーから聞こえるように設定します。(「インプットモニター」「ダイレクトモニタリング」などの名称で呼ばれます。)
  5. 実際に歌う/演奏する: マイクに向かって、または楽器を演奏して、実際に録音する際に想定される最も大きな音量で声を出したり、音を鳴らしたりします。これは、最も音量が大きくなる瞬間に音割れしないようにするためです。
  6. ゲインノブを徐々に上げる: 声を出したり演奏したりしながら、オーディオインターフェースのゲインノブをゆっくりと上げていきます。同時に、オーディオインターフェース本体のレベルインジケーターや、DAWのトラックに表示されるレベルメーターを確認します。
  7. 目標レベルに調整: メーターが先述の-6dBから-12dBあたりに収まるように、ゲインノブを調整します。ピーク時(一番大きな音が鳴った瞬間)に赤いランプが点灯したり、メーターが振り切れたりしないように注意してください。赤いランプが点灯したら、少しゲインを下げてください。
  8. 何度か試して確認: 一度設定したら終わりではなく、実際に歌ったり演奏したりを何度か繰り返し、常にピークレベルが適切な範囲に収まっているかを確認します。特に、歌の場合はフレーズによって音量が大きく変わることがあるため、色々な部分を試してみてください。

録音レベル設定の注意点

まとめ

適切な録音レベルの設定は、クリアで扱いやすい音源を得るための最初のステップです。オーディオインターフェースのゲインコントロールとDAWのレベルメーターをしっかり確認しながら、音割れせず、かつノイズフロアから十分離れた理想的なレベルを目指してください。

この手順を参考に、ぜひご自身の歌や演奏を良い音質で録音してみてください。