歌や演奏をDAWで録音する基本的な流れと設定
「歌ってみた」や「演奏してみた」の制作を始める上で、自分の声や楽器の音をパソコンに取り込む「録音」は避けて通れないステップです。録音には、専用のソフトウェアであるDAW(Digital Audio Workstation)を使用するのが一般的です。
ここでは、DAWを使った録音の基本的な流れと、最初の設定について解説します。これからDAWを使い始める方、録音方法が分からない方は、ぜひ参考にしてください。
DAWを使った録音の準備
録音を始める前に、いくつかの準備が必要です。
- 必要な機材の接続: マイク、オーディオインターフェイス、ヘッドホン、楽器などをパソコンに正しく接続してください。オーディオインターフェイスは、マイクや楽器の音をパソコンに取り込むための機材です。
- DAWソフトウェアのインストールと起動: 使用するDAWソフトウェアがパソコンにインストールされており、正常に起動できることを確認してください。
- オーディオ設定の確認: DAWの環境設定で、使用するオーディオインターフェイスが正しく認識され、入出力デバイスとして選択されているか確認してください。ASIO(Windows)やCore Audio(Mac)といったドライバー設定も重要です。
新しいプロジェクトを作成する
DAWを起動したら、まずは新しいプロジェクトを作成します。これは、録音した音声データや設定などをまとめて保存するための「作業部屋」のようなものです。
- DAWのメニューから「新規プロジェクト」や「新しいソング」といった項目を選びます。
- プロジェクトの保存場所を指定します。分かりやすい場所に専用のフォルダを作成することをおすすめします。
- サンプリングレートやビット深度といったオーディオ設定を求められる場合があります。一般的には、サンプリングレートは44.1kHzまたは48kHz、ビット深度は16bitまたは24bitがよく使われます。迷う場合は、DAWの初期設定や一般的な設定(例:44.1kHz/24bit)を選択してください。
音声トラックを追加する
録音するためには、音声を記録するための「トラック」が必要です。
- DAW上で新しいトラックを追加します。通常、「トラック」メニューや右クリックメニューから「オーディオトラックを追加」といった項目を選択します。
- トラックには、モノラルとステレオの種類があります。ボーカルやギター、ベースなどの単一の音源を録音する場合はモノラルトラックを選択することが多いです。ステレオマイクを使ったり、キーボードのステレオ出力を録音したりする場合はステレオトラックを選択します。
- 追加したオーディオトラックの入力設定を行います。使用するオーディオインターフェイスのどの入力端子からの音を、このトラックで録音するのかを指定します。例えば、マイクをオーディオインターフェイスのInput 1に繋いだ場合は、トラックの入力を「Input 1」に設定します。
入力レベルを確認する(ゲイン設定)
録音する音が小さすぎたり、大きすぎて音が割れてしまったりしないように、適切な音量で入力されるように調整します。この調整を「ゲイン設定」と呼びます。
- マイクや楽器をオーディオインターフェイスに繋ぎ、実際に声を出したり楽器を鳴らしたりします。
- DAWのトラック上にあるレベルメーターを確認します。音が入力されるとメーターが振れます。
- オーディオインターフェイス側のゲインノブ(入力レベル調整つまみ)を操作して、メーターの振れ幅を調整します。
- 重要な注意点: メーターが赤色になる箇所(「クリッピング」と呼ばれる、音が歪んでしまう状態)に達しないようにレベルを調整してください。理想的には、音が一番大きい箇所でもメーターが赤色にならない範囲で、かつある程度の音量が得られるように設定します。少し余裕を持たせたレベルで録音すると、後での調整がしやすくなります。
録音を実行する
入力レベルの確認ができたら、いよいよ録音です。
- 録音したいトラックの「録音待機ボタン」(Rマークなどが一般的)をオンにします。
- DAWのトランスポートコントロール(再生、停止、録音などのボタンが集まった箇所)にある「録音ボタン」を押します。
- 録音が開始されます。演奏や歌唱を行います。
- 演奏や歌唱が終わったら、DAWの「停止ボタン」を押して録音を終了します。
録音中にリズムの目安となるメトロノームを鳴らすことも可能です。DAWのメトロノーム機能を活用すると、テンポを安定させて録音することができます。
また、ぶっつけ本番ではなく、何度か練習録音をしてみることをおすすめします。実際に録音して聴き返してみることで、演奏の癖やマイクの距離感などを把握し、より良いテイクを録るための改善点が見つかることがあります。
録音後の確認と簡単な編集
録音した音声は、DAWの画面上に波形として表示されます。
- 録音された波形が正しく表示されているか確認してください。
- 再生して、意図した通りに録音できているか確認します。音量が小さすぎる、大きすぎる、ノイズが入っているといった問題がないか確認します。
- 不要な無音部分やミスした箇所などを、DAWの編集機能を使ってカットしたり、移動させたりすることができます。これは後からでも可能ですが、簡単な整理をしておくと後の作業がスムーズになります。
まとめ
DAWを使った録音は、いくつかのステップを経て行われます。機材の準備、新しいプロジェクトの作成、トラックの追加と設定、入力レベルの確認、そして実際の録音と確認です。特に、適切な入力レベルでの録音は、その後の音質に大きく関わるため重要です。
この記事で解説した基本的な流れを参考に、まずは一度ご自身の声や楽器をDAWに録音してみてください。実際に手を動かすことで、理解が深まるでしょう。
録音した音源は、必要に応じて編集やミックスといった次のステップに進めることができます。