歌奏テクニック集

歌や演奏でパートを重ねる 多重録音の基礎

Tags: 多重録音, DAW, 録音, 歌ってみた, 演奏してみた

「歌ってみた」や「演奏してみた」の作品を制作する上で、複数の音や演奏を重ね合わせたい場面があるかと思います。例えば、歌のハモリパートを追加したり、ギターソロを別のトラックで録音して重ねたり、複数の楽器の演奏を組み合わせたりする場合です。このような、複数の音源を時間軸に沿って重ねていく作業を「多重録音」(マルチトラックレコーディング)と呼びます。

多重録音は、楽曲に厚みを持たせたり、表現の幅を広げたりするために非常に重要な技術です。ここでは、多重録音の基本的な考え方と、DAW(Digital Audio Workstation)を使った基本的な手順について解説します。

多重録音の基本的な考え方

多重録音の基本的な考え方はシンプルです。まず、楽曲の基準となる最初のパート(例えば、主旋律の歌や、ガイドとなる楽器演奏など)を録音します。次に、その録音した音源を聴きながら、別のトラックに次のパートを重ねて録音していく、という作業を繰り返します。

このプロセスで重要なのは、後から録音するパートが、先に録音したパートのタイミングやリズムに正確に合わせられるようにすることです。そのため、録音時にはヘッドホンを使用し、既に録音された音源や、リズムのガイドとなるクリック音(メトロノーム)を聴きながら演奏・歌唱するのが一般的です。

また、それぞれのパートは「トラック」と呼ばれる独立した場所(レーン)に録音されます。これにより、後からそれぞれのパートの音量や音質を個別に調整することが可能になります。

DAWを使った多重録音の基本的なステップ

多くの歌ってみた・演奏してみた作品の制作に使われるDAWは、多重録音を行うための機能が備わっています。基本的な手順は以下のようになります。

1. 新しいプロジェクトを作成する

まず、DAWを起動し、新しいプロジェクトを作成します。プロジェクトの設定(サンプリングレートやビット深度など)は、使用するオーディオインターフェースやプロジェクトの目的に合わせて設定します。通常はデフォルト設定でも問題ありません。

2. 基準となる最初のトラックを準備・録音する

多重録音の中心となる最初のパートを録音するためのオーディオトラックを作成します。例えば、歌の主旋律やギターのバッキングパートなどがこれにあたります。 トラックの録音準備(インプット設定、録音待機ボタンのオンなど)が完了したら、実際に演奏または歌唱して最初のトラックを録音します。この際、後から他のパートを重ねやすいように、リズムが正確であることや、おおまかな構成がわかるように演奏することが望ましいです。リズムを正確にするために、DAWのメトロノーム機能を活用すると良いでしょう。

3. 新しいオーディオトラックを追加する

次に、重ねて録音したい次のパートのために、新しいオーディオトラックを追加します。DAWのメニューやツールバーから「トラックを追加」「オーディオトラックを追加」といった操作を行います。これにより、最初のトラックとは別に、独立して録音できる場所が用意されます。

4. 追加したトラックに次のパートを録音する

追加した新しいトラックを選択し、録音準備を行います。この時、必ずヘッドホンを使用してください。ヘッドホンから、先に録音した最初のトラックの音源と、必要であればメトロノームの音を聴きながら、次のパートを演奏または歌唱します。 録音ボタンを押して、新しいトラックに重ねたいパートを録音します。

5. 必要に応じて手順3と4を繰り返す

さらに別のパート(例:ハモリ、別の楽器、エフェクト音など)を重ねたい場合は、手順3と4を繰り返します。必要なパートの数だけ新しいトラックを作成し、それぞれに録音していきます。

6. 各トラックの音量やタイミングを調整する

全てのパートの録音が完了したら、それぞれのトラックの音量バランスを調整します。また、録音時に発生した微妙なタイミングのずれを修正したり、不要な部分をカットしたりといった基本的な編集作業を行います。これらの調整は、後から行うミックス作業の基礎となります。

多重録音の注意点

まとめ

多重録音は、「歌ってみた」や「演奏してみた」の作品制作において、表現の幅を大きく広げるための基本的な技術です。最初のうちはタイミングを合わせるのが難しく感じるかもしれませんが、DAWの機能を活用し、繰り返し練習することで、徐々にスムーズに行えるようになります。ここで解説した基本的なステップを参考に、ぜひあなたの作品づくりに多重録音を取り入れてみてください。