歌や演奏をスマートフォンで手軽に録音する基本的な方法
はじめに
「歌ってみた」や「演奏してみた」を始めたいと考えたとき、まず最初に直面するのが「どうやって音を録るのか」という疑問です。本格的な機材を揃える前に、手持ちのスマートフォンで手軽に録音を試してみたいという方もいらっしゃるでしょう。
スマートフォンを使った録音は、専門的な知識や機材がなくてもすぐに始められるという大きな利点があります。一方で、パソコンを使った録音環境と比較すると、音質には限界がある場合もあります。しかし、最初のステップとしては十分有効であり、基本的な録音の感覚を掴むのに役立ちます。
この記事では、スマートフォン一台で歌や演奏を録音するための基本的な方法と、より良い音で録音するためのちょっとした工夫について解説します。
スマートフォンで歌や演奏を録音するために必要なもの
スマートフォンを使って歌や演奏の録音を始めるにあたって、最低限必要なものと、あると便利なものがあります。
最低限必要なもの
- スマートフォン本体: 録音機能やマイクが内蔵されています。
- イヤホンまたはヘッドホン: 録音した音を確認するために使用します。スマートフォンの内蔵スピーカーでも確認はできますが、イヤホンやヘッドホンを使うことで、より細かな音のニュアンスやノイズを確認しやすくなります。
あると便利なもの
- 外付けマイク: スマートフォンの内蔵マイクよりも高品質な音で録音できる場合があります。ボーカル用や楽器用など、様々な種類のマイクがあります。
- マイク/イヤホン変換アダプターまたはハブ: スマートフォンの機種によっては、イヤホンジャックがなく、充電端子とイヤホン端子が兼用になっている場合があります。その際、録音と同時にイヤホンでモニター(録音中の音をリアルタイムで確認すること)を行いたい場合に必要になります。
- マイクスタンド: 外付けマイクを使用する場合、マイクを適切な位置に固定するために役立ちます。
- ポップガード/ウィンドスクリーン: ボーカル録音時に、息の吹きかけによる「ボコッ」というノイズ(ポップノイズ)や風によるノイズを軽減します。
スマートフォンでの基本的な録音手順
多くのスマートフォンには、標準でボイスレコーダー機能やカメラの動画撮影機能に録音機能が搭載されています。まずはこれらの機能を使って録音を試すことができます。より音楽録音に適した機能を持つアプリも多数提供されています。
1. 録音するアプリを選ぶ
- 標準の録音アプリ: スマートフォンに最初から入っている「ボイスメモ」や「レコーダー」といった名前のアプリです。手軽にすぐに使えます。
- 音楽録音向けアプリ: 高音質での録音設定や、録音レベルのメーター表示など、音楽用途に特化した機能を持つ無料または有料のアプリがあります。
まずは標準のアプリで試してみて、必要に応じて音楽録音向けアプリを検討するのも良い方法です。
2. 録音場所を決める
できるだけ静かで、余計な反響の少ない場所を選びます。エアコンの音や外の騒音が入らないように注意し、布製の家具が多い部屋や、壁があまり硬くない場所を選ぶと、反響音を抑えやすくなります。
3. 録音の準備をする
- スマートフォンの通知音などが録音に入らないように、機内モードにするか、「おやすみモード」などを活用して通知をオフに設定します。
- 内蔵マイクを使う場合は、マイクの位置を確認し、マイクが塞がれていないか確認します。外付けマイクを使う場合は、スマートフォンとマイクを接続します。
- イヤホンまたはヘッドホンを接続し、録音した音を確認できるように準備します。
4. 録音レベルを確認する
多くの録音アプリには、録音している音の大きさを表示するメーター(レベルメーター)があります。音が小さすぎると後から大きくしたときにノイズも大きくなってしまいますし、大きすぎると音が割れて(ひずんで)しまいます。メーターが振り切りすぎないように、歌ったり演奏したりしながら、声量や楽器の音量、スマートフォン(またはマイク)との距離を調整します。アプリによっては録音レベルを細かく調整できるものもあります。
5. 録音を開始する
アプリの録音ボタンを押して、歌や演奏を開始します。録音中は、スマートフォンやマイクに触れたり、大きな物音を立てたりしないように注意します。
6. 録音を停止し、確認する
演奏や歌唱が終わったら、録音を停止します。必ずイヤホンまたはヘッドホンを使って、録音した音源を聞き返します。音量、音質、ノイズが入っていないかなどを確認し、もし問題があれば再度録音を試みます。
より良い音で録音するための工夫
スマートフォンでの録音でも、少し工夫するだけで音質を向上させることが可能です。
- 静かな環境を選ぶ: これが最も重要です。部屋のノイズは後から取り除くのが難しい場合が多いです。
- スマートフォン(マイク)との距離を調整する: 近すぎると息の音や小さなノイズが入りやすく、遠すぎると音が小さくなってしまいます。何度か試してみて、声や楽器の音量が適切に拾える距離を見つけてください。ボーカルの場合は、口元から15〜30cm程度を目安にするのが一般的ですが、これはあくまで目安です。
- 外付けマイクを検討する: 内蔵マイクは手軽ですが、音質の面では限界があります。予算があれば、スマートフォン対応の外付けマイクを導入することで、クリアな音での録音が可能になります。
- 部屋の反響を減らす: カーテンを厚手のものにする、壁際に毛布などを立てかける、クローゼットの中などで録音するなど、簡単な方法でも部屋の反響音を抑える効果が期待できます。
録音した音源の保存と活用
録音した音源は、アプリ内に保存されるのが一般的です。必要に応じて、クラウドストレージサービスなどを利用してバックアップを取っておくと安心です。
多くの録音アプリでは、WAVやAAC(M4A)といった音声ファイル形式で保存できます。これらのファイルは、スマートフォンの他のアプリで再生したり、パソコンに転送して編集したりすることが可能です。
録音した音源をパソコンのDAWソフトに取り込めば、さらに細かな音量調整やエフェクト処理を行うなど、本格的な編集に進むこともできます。
まとめ
スマートフォンを使った歌や演奏の録音は、「歌ってみた」や「演奏してみた」の世界への最初の入り口として非常に有効です。複雑な機材や専門知識は不要で、今すぐにでも始めることができます。
今回ご紹介した基本的な手順や工夫を参考に、まずは手軽に録音を試してみてください。そして、さらにステップアップを目指したいと感じたら、次の段階としてパソコンを使った録音環境やDAWソフトについても調べてみることをお勧めします。